随意随想

これからの地域づくり

大阪市立大学非常勤講師 竹村 安子

 先日、某区の有償活動サポーターの研修に参加させていただいた。

 参加されたメンバーは12人で、有償活動に参加したきっかけは、約50%が地域活動やボランティア活動をしていたので参加したとのこと、後の50%は区役所や実施団体の募集の呼びかけで応募したということだった。年代は60歳以上の方が多く、男性も3人参加されていた。

 そして、そこで気が付いたことは、多くの方が、親やパートナーの介護や看護の経験をされているということだった。  懇談になると、介護した親たちの心身の変化の様子などの体験談が飛び交ったが、その後、自分自身が高齢になって、介護・看護が必要になった時や、介護保険がこれからどうなっていくのかという、自分が今感じている問題や不安などの意見が出された。その中で、近隣関係が大事だ、コミュニティづくりを進めなければ、という意見もでてきた。皆さん「そうだ、そうだ…」と言いながら、「どこが進めてくれるのか」「町会の役員さんも高齢で、忙しい」「行政がもっと本腰をいれて取り組むことが必要だ…」などの意見が出た。

 話を聞いていて、ふと頭をよぎったのは、高齢者支援の活動に関わっているボランティアや市民の多くが、介護・看護をした経験や、子供の時に高齢者と一緒に暮らしてきた人が多いということだ。

 しかし、現在の65歳以降の人たちは、高齢者と一緒に生活したという人は少ない。40歳以降は極めて少なくなる。

 高齢者と生活した経験のない人は、人間は高齢になると心身が衰え、今まで可能だったことが、徐々にできなくなっていったり、高齢になるほど親族や知人などの身近な人が、亡くなられたり、入院されたり、施設に入所されたり、子供さんの家に行かれたりなどで、いなくなっていく孤独や孤立感などを感じているということを理解できるだろうか…。

 高齢者と子供・若者たちとの協働活動を考え、実践していかなければ、大変なことになるのではないかと、危機感が募ってくる。

 平成29年度には、介護保険の改定により、要支援の高齢者は、ホームヘルパーさんやデイサービスが利用できなくなり、住民や市民による見守り・助け合い・サロン・食事サービスなどの「生活支援サービス」を利用してくださいと、厚生労働省では計画しているが、本当にこの短期間に、そのような活動が生まれてくるのか、はなはだ疑問と言わざるを得ない。

 私は自宅のすぐ近くに、築80年以上の長屋の古民家(広さは約11坪)で週2回ほど、サロンを主宰しているが、世話人や小物づくり・笑いヨガなどのプログラムの講師の方々全員がボランティアで、交通費や報酬などは全く出していない。しかも、大半が70歳前後の方たちで、活動を楽しみながら無理しないでやっておられる。活動者を募っても「私はサロンに来て楽しみたいだけで、世話人になるのは嫌です」と断られることも多い。

 細々と活動しているが、このような状態で要支援の方々をサロンに受け入れることができるかどうか、はなはだ心もとない。

 もっと、60歳以下の方や若い人たちが参画して欲しいと思っているが、それらの人たちの多くは、仕事で忙しく、平日の活動をするのは難しい。

 60歳以下の方や若者、子供たちが活動に参加できる仕掛けが、これからの超高齢社会を考えていくうえで、必要だと思う。

 1・2か月前にテレビでデンマークの取り組みをみた。デンマークでは、会社に勤めている人が、勤務時間内に高齢者の話し相手や、外出介助などのボランティア活動をしていた。勤務時間内にボランティア活動をすることが認められているとのことである。これからの日本でもそのようなことを考えていく必要があるのではないか。

 10年後には、団塊の世代といわれる、第一次ベビーブームの人たちが75歳以上の後期高齢者となる。それに備えてという訳ではないが、人と人とのつながりが薄くなってしまった地域社会で、見守り・助け合い・サロン活動などの住民・市民活動が誕生していくように努力することが重要だ。

 不安はいっぱいだが、「賽は投げられた」わけであり、昨年の流行語ではないが、「いつやるのか?」「今でしょう!!」と、まず老人クラブなどの地域団体や福祉関係者は、理解者を増やし、できる活動にぼちぼち取り組んでいき、10年後に向けて、地域力を醸成し、「無縁社会」が「有縁社会」になっていくよう生活支援サービスが、地域を創っていくきっかけになればと願っている。

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