随意随想

大阪市の高齢者施策について

大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課長 久我 秀人

 平成26年10月の推計人口によると、大阪市の人口は268万6246人で、65歳以上の人口は66万3364人、人口割合は24・9%(全国25・9%)、75歳以上の人口は31万2837人で、人口割合は11・8%(全国12・5%)となっています。
 平成22年の国勢調査による大阪市の人口は266万5314人で、65歳以上の人口は59万8835人(人口割合22・7%)、75歳以上の人口は27万993人(人口割合10・3%)であり、4年間の人口推移は横ばいで、65歳以上の人口は10・8%の増加(全国11・8%)、75歳以上の人口は15・4%の増加(全国12・1%)となっており、都市部の特徴として、今後も75歳以上の人口が増加することが見込まれています。
 大阪市の65歳以上の高齢者を含む世帯のうち、高齢者のひとり暮らし世帯の割合は、平成22年の国勢調査で41・1%(全国24・8%)となっており、全政令指定都市の中で最も高くなっています。また、平成26年11月の大阪市の認知症高齢者数(要介護認定推計)は6万3145人で、平成22年11月の5万1121人から1万2024人の増加で、4年間で増加率23・5%となり、65歳以上の人口の増加率10・8%を大幅に上回っています。
 このような状況を踏まえ、大阪市では、平成27年3月に「大阪市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(平成27年度〜29年度)」を策定しました。この計画は、「健康でいきいきとした豊かな生活の実現」「個々人の意思を尊重した生活の実現」「安全で快適な生活環境の実現」「利用者本位のサービス提供の実現」を基本方針とし、今後、団塊の世代がすべて75歳以上となる平成37年(2025年)の社会を見据え、今後10年間をかけて、高齢者ができるかぎり住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・介護予防・住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)を構築することを目標としています。
 また、この計画では、段階的に大阪市における地域包括ケアシステムを構築するため、次の5つの取り組みを重点的な取り組みとして位置づけ、現在様々な施策を推進しております。
(1)「高齢者の地域包括ケア推進体制の構築」
 高齢化の進展により24時間のケアが必要な高齢者の増加が見込まれ、高齢者の在宅生活を支えるため、医療と介護の連携の推進に取り組んでおります。また、高齢者を支援する関係機関が連携するネットワークの構築を推進するため、地域包括ケアの中核的な機関である地域包括支援センターの運営の充実に取り組んでおります。
 また、大阪市では、ひとり暮らし高齢者世帯が多く、高齢者が地域で安心して生活を送るためには、専門機関による支援機能の充実だけでは限界があるため、近隣住民による見守り・相互援助などの「地域における見守り施策の推進」に取り組んでおります。
(2)「認知症の方への支援と高齢者の権利擁護施策の推進」
 今後、認知症の人のさらなる増加が見込まれ、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続けることができる社会を実現するため、認知症の人の早期発見、早期対応、地域で支える医療・介護サービスや日常生活・家族支援の強化、若年性認知症の人の支援、医療・介護サービスを担う人材の育成、専門医療・介護機能の継承発展、高齢者虐待防止、権利擁護や日常生活支援などに取り組んでおります。
(3)「介護予防の充実、市民による自主的活動への支援」
 高齢期をすこやかに過ごすために、生活習慣病対策と介護予防を総合的に推進していく取り組みが重要であり、介護予防・健康づくりを推進しております。
 また、高齢者が生きがいをもって生活をすること、継続的に地域団体の活動に参加するなどの社会参加は介護予防の取り組みとしても重要です。地域活動への参画支援、意欲と能力のある高齢者に対する就労支援、ボランティア活動、NPO活動等への参画支援などに取り組んでおります。
 各老人クラブでは、地域のニーズに応じた様々な活動を展開することにより高齢者同士の交流を通じた生きがいと健康づくりを進めておられます。大阪市では、今後とも、「老人クラブ」の活動を引き続き支援し、高齢者の生きがいと健康づくり、社会参加の促進を支援していきます。
(4)「地域包括ケアに向けたサービスの充実」
 要支援者に対する介護予防給付のうち、訪問介護・通所介護は、全国一律の基準に基づくサービスから、地域の実情に応じて、市町村が実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行することとなります。大阪市では、平成29年(2017年)4月までの実施に向けて取り組んでおります。
 また、重度な要介護状態となっても安心して暮らせる支援体制を構築するため、居宅サービスや地域密着型サービスなどの充実に取り組むとともに、介護サービスの質と向上の確保、在宅支援のための福祉サービスの充実などに取り組んでおります。
(5)「高齢者の多様な住まい方の支援」
 「住まい」は地域包括ケアの基礎となるものであり、できる限り住み慣れた地域で住みつづけることができるような「住まい」の確保が必要となります。
 在宅での生活が困難になった場合の「施設」や、将来介護が必要となった場合に必要な介護サービスが提供される「住まい」への住み替えなど、高齢者の多様な住まい方の支援、高齢者の居住の安定に向けた支援、施設・居住系サービスの推進、住まいに対する指導体制の確保などに取り組んでおります。
 大阪市では今後とも、同計画に基づき、高齢者ができる限り住み慣れた地域で、自立した日常生活を安心して営むことができるよう、施策の推進に努めてまいります。

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