随意随想

大阪市の介護予防・日常生活支援総合事業(新しい総合事業)について

大阪市福祉局高齢者施策部在宅サービス事業担当課長 河合 初江

【介護保険の「新しい総合事業」】

 最近、新聞やテレビで「2025年問題」という言葉を聞くことが多くなってきました。いったい何が「問題」なのでしょうか。

 戦後の第一次ベビーブーム世代、いわゆる「団塊の世代」の方は、すべて65歳以上の高齢者となりました。

 2025年(平成37年)には、この方たちが75歳以上の後期高齢者となり、大阪市の後期高齢者の人口は現在の1・3倍程度に増えますが、他方で、介護の担い手となる生産年齢人口(15歳〜64歳)は減少すると見込まれています。

 75歳以上になると、介護の必要な方が大幅に増えることから、介護の担い手や財源が不足するおそれがある、ということが問題となっているのです。

 こうした問題に対応するために、平成26年に介護保険法が改正され、これまで大きな役割を果たしてきた介護保険制度が、今後も持続可能な制度となるように、各市町村が「介護予防・日常生活支援総合事業」、いわゆる「新しい総合事業」を実施することとなりました。

 大阪市では、平成29年4月から「新しい総合事業」を実施します。

 介護保険制度は、会員のみなさまにも関わりの深い制度ですので、この事業の内容について、ご説明したいと思います。

【新しい訪問型サービス・通所型サービス】

 「新しい総合事業」には、2本の柱があります。

 1本目の柱は、「介護予防・生活支援サービス事業」といい、要支援の方が利用する全国一律の訪問介護(ホームヘルプサービス)、通所介護(デイサービス)が市の事業となり、現行のサービスに多様なサービスを追加して、訪問型サービス(3種類)、通所型サービス(3種類)を展開し、その方の心身の状態に応じたサービスを提供していきます。

 サービス利用の手続きは、これまでと変わりません。

【生活援助型訪問サービス】

 具体的なサービスの例をご紹介します。

 訪問型サービスには、「生活援助型訪問サービス」というサービスが新設されます。

 これは、掃除、買い物、洗濯、調理などの生活援助を提供するサービスで、訪問介護員(ホームヘルパー)に加えて、大阪市の研修を修了した方も従事することができるようになります。

 利用者が負担する金額は、現在の訪問介護の4分の3となります。

 大阪市内には訪問介護の事業所が約2千ありますが、その大半が参入する見込みで、新たな介護の担い手のすそ野が拡がると期待されています。

 大阪市では、昨年12月から毎月2〜3回研修を行い、従事者を養成しており、平成29年4月以降も定期的に研修を行う予定です。

 掃除、買い物などの生活援助は、一見誰でもできそうに思えますが、利用者の心身の状態を理解し、その方のライフスタイル、価値観を尊重することが大切で、同じ世代の高齢者の方が、より細やかな支援を行うことができる、というご意見もあります。

 元気な高齢者が、これからの介護の担い手、支え手にまわることも、大変期待されています。

【これからの鍵は介護予防に】

 「新しい総合事業」のもう1本の柱が「一般介護予防事業」です。

 「2025年問題」の原因は、介護の必要な高齢者が大幅に増加することにあることから、介護予防に取組む地域づくりを進め、健康寿命を延ばすことがますます重要になり、この観点から、これまでの介護予防事業を再編します。

 地域の住民の介護予防の取組みで大きな成果を上げているのが、高齢者の筋力トレーニング「いきいき百歳体操」です。

 大阪市では、今年度から、全市で「おもり」やDVDの貸出などを行ったところ、大変大きな反響があり、新たに100以上のグループが立ち上がり、400グループ、9千人ほどの参加者が見込まれています。

 続けている方は、筋力、バランス力などが向上するだけではなく、アンケートによれば、8割近い方が「気持ちが明るくなった」「友人・知人ができた」と回答されており、この体操の輪がさらに大きく広がることが期待されています。

 また、平成27年度から始まった「介護予防ポイント事業」も徐々に活動される方が増えてきました。

 あらかじめ研修を受け登録した65歳以上の方が、市内300か所の特別養護老人ホーム・デイサービスセンターなどの施設・事業所で、行事・レクリエーションの補助、話し相手などの介護支援活動に参加するとポイントが貯まり、貯まったポイントを換金することができます。

【地域の介護予防活動のリーダーとして】

 介護予防には、継続して何かの「活動」に打ち込むことが効果的と言われています。

 「健康・友愛・奉仕」の実現をめざし、高齢者の健康づくり、生きがいづくり、仲間づくりに取組んでこられた老人クラブの会員のみなさまは、まさに介護予防のトップランナーです。

 今後の大阪市の介護予防に取組む地域づくりのリーダーとして、ますますのご活躍を期待いたします。

随意随想 バックナンバー