随意随想

「消費者行政の充実に向けて」

大阪市消費者センター所長 西山 嘉和

大阪市消費者センターでは、悪質商法の被害を受けた場合など、消費生活上のさまざまなトラブルについて、大阪市内にお住まいの消費者の方を対象に相談を受け付け、解決のための助言やあっせんを行っています。

平成21年度に寄せられた消費生活相談の件数は20、048件と、依然多くの相談が寄せられています。寄せられた相談について、相談内容、トラブルの解決と被害の救済状況等をご紹介します。

【主な相談内容】

○架空請求・不当請求についての相談 はがきや電話、メールなどにより、利用した覚えのない商品の購入代金や、アダルトサイト・出会い系サイトなどの利用料金を請求する「架空請求」や携帯電話やパソコンのサイトの画面をクリックしただけで、あたかも利用契約が成立したかのように思わせて法外な料金を請求する「不当請求」についての相談が3、305件あり、総件数の16・5%を占めています。被害に遭わないためには脅し文句や甘い言葉に騙されず、相手には絶対に連絡をせず毅然とした態度で無視することが大切です。

○賃貸アパートに関する相談 退去時に高額な補修費用を請求されたり、次の入居者のためのリフォームやハウスクリーニング費用を請求されたなどという相談が1、102件ありました。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化や通常使用の損耗等の修繕費用については家賃に含まれるものとしています。借主の過失による損耗は修理費用を負担する必要がありますが、次の入居者のためのリフォーム費用やハウスクリーニング費用については支払う必要はありません。退去時の確認には必ず立ち会い、貸主や管理会社と確認することが大切です。

○フリーローン・サラ金に関する相談 フリーローン・サラ金に関する相談は618件あり、違法な高金利を徴収し、脅迫や暴行などの手段で取り立てをするヤミ金融に関する相談や多重債務に関する相談が半数以上を占めています。多重債務に陥らないためには、安易にクレジットやローンを利用しないことです。また、借金を返済するための借金も絶対にやめましょう。借金問題は必ず解決できます。消費者センターでは、こうした借金問題の解決を図るため、関係機関と連携し、多重債務相談会を開催するなど、解決に向けての助言を行っています。

○高齢者を狙う悪質商法についての相談 「お宅の屋根がずれていたので気になって」などといって訪問し、「このままでは家が壊れて近隣にも迷惑がかかる」などと不安を煽り、屋根工事・床下工事などの住宅リフォームの契約を行い、高額の料金を請求する「点検商法(85件)」や、チラシなどで食品や日用品などを安い値段で販売するとして会場へ誘い込み、買わないと損をするような一種の催眠状態に近い状態で高額な羽毛布団や健康食品などを買わせる「SF(催眠)商法(25件)」、役所の職員等であるかのように装い、高額な浄水器や防犯防災警報装置などを売りつける「かたり商法(71件)」についての相談が寄せられています。

また、海外商品先物取引などの金融商品に関する相談(126件)では、高齢者の占める割合が65%と非常に高くなっています。「高額配当が受け取れる」「損はしない」などと言葉巧みに勧誘され契約したところ、利益が出るどころか殆どお金が戻らなかったなどという相談が寄せられました。海外商品先物取引などは仕組みが複雑で、知識や経験が無い人が行うのはリスクが非常に高い取引といえます。取引内容がよくわからない、説明を受けても理解できない契約は、曖昧な返事はせずにきっぱりと断ることが重要です。また中には、言葉巧みに事務所に誘って契約をさせる事業者もいますので注意しましょう。

【消費者センターによるトラブルの解決と被害の救済】

○クーリング・オフの助言 クーリング・オフを助言した相談案件は822件あり、うち契約金額を把握している643件の合計は3億2、953万円でした。

○あっせんの実施 消費者が自主交渉を尽くしても問題解決が困難で、事業者の販売方法等に法令違反などの問題点があった場合は、消費者と事業者の間に入りあっせん交渉を行います。平成21年度は591件のあっせんを行い、531件をあっせん解決しました。うち、契約金額を把握している344件の合計は1億9、780万円でした。また、消費者センターによるあっせん解決が困難な案件について、大阪市消費者保護審議会(苦情処理部会)によるあっせん・調停の制度を活用して、消費者被害の救済を図っており、平成21年度には「結婚式場における婚礼契約に係る紛争案件」について解決を見ました。

【事業者指導の実施】

平成19年度から大阪府と共同で事業者指導チームを編成し、市条例、府条例に基づく指導を一体的に実施しているほか、大阪府の「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」に基づいて行う行政処分と連携して、悪質な事業者に対する指導を強力に進めています。21年度は、違反した16事業者に対して条例に基づく指導・勧告を実施しましたが、うち7事業者について大阪府と共同で指導を行いました。

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