随意随想

「消費者行政の充実に向けて」

大阪市消費者センター所長  西山 嘉和

大阪市消費者センターでは、市民の皆さんが、安全・安心な消費生活を過ごしていただけるよう、寄せられたさまざまな相談、情報に対し、消費生活上のトラブルの解決のための助言やあっせん、あるいは、悪質商法に気をつけていただくための情報提供など、消費者行政の推進に努めております。消費者被害を防止するためには、行政のたゆまぬ努力とともに、消費者一人ひとりが、消費者としての基本的知識をもっていただき、ご自身で責任ある契約を選択する「力」をつけていただくことが大切です。

こうしたことから、消費者センターでは、市民が安心して暮らすことができるよう、悪質商法などからの消費者被害の未然防止・拡大防止のための施策や自分で責任ある判断ができる自立した消費者になっていただくための啓発などの施策に、今後一層、力を注いでまいります。

消費者センターでは平成22年度に新たに受け付けた件数が、20、901件と前年度よりやや増加するなど、依然多くの相談が寄せられています。特徴としては、架空請求や不当請求に関する相談が多数を占めていますが、賃貸アパートの退去時の補修費用に関する相談も増加しています。また、金融商品トラブルに関する相談が増加しており、高齢者が占める割合が高くなっています。

寄せられた相談について、相談内容、被害の救済状況等についてご紹介します。

【主な相談内容】

架空請求・不当請求についての相談

▼メールや電話などにより、利用した覚えのない商品の購入代金や、アダルトサイト・出会い系サイトなどの利用料金を請求する「架空請求」や携帯電話やパソコンのサイトの画面をクリックしただけで、あたかも利用契約が成立したかのように思わせて法外な料金を請求する「不当請求」についての相談が2、944件あり、総件数の14・1%を占めています。そのうち「ワンクリック請求」に関する相談は、1、533件と年々増え続けています。

被害に遭わないためには脅し文句や甘い言葉に騙されず、相手には絶対に連絡せず毅然とした態度で無視することが大切です。

▼賃貸アパートに関する相談

退去時に高額な補修費用を請求されたり、次の入居者のためのリフォームやハウスクリーニング費用を請求されたなどという相談が1、203件ありました。

退去時の確認には必ず立会い、貸主や管理会社と確認することが大切です。

▼フリーローン・サラ金に関する相談

フリーローン・サラ金に関する相談は559件あり、違法な高金利を徴収し、脅迫などの手段で取立てるヤミ金融に関する相談や多重債務に関する相談が半数以上を占めています。

多重債務に陥らないためには、安易にクレジットやローンを利用しないことです。また、借金を返済するための借金も絶対にやめましょう。消費者センターでは、こうした借金問題の解決を図るため、関係機関と連携し、多重債務相談会を開催するなど、解決に向けての助言を行っています。

▼高齢者を狙う悪質商法についての相談

悪質業者は言葉巧みに高齢者の不安をあおり、親切にして信用させ、年金・貯蓄などの大切な財産を狙っています。また、高齢者は自宅にいることが多いため、訪問販売や電話勧誘販売による被害に遭いやすいのも特徴です。

具体的な手口として、「お宅の屋根の瓦がずれていたので気になって」などといって訪問し、「このままでは家が壊れて近隣にも迷惑がかかる」などと不安を煽り、屋根工事・床下工事などの住宅リフォームの契約を行い、高額の料金を請求する「点検商法(86件)」や、チラシなどで食品や日用品などを安い値段で販売するとして会場へ誘い込み、買わないと損をするような一種の催眠状態に近い状態で高額な羽毛布団や健康食品などを買わせる「SF(催眠)商法(16件)」、役所の職員等であるかのように装い、高額な浄水器や防犯防災警報装置などを売りつける「かたり商法(81件)」についての相談が寄せられています。

また、未公開株や海外先物取引などの金融商品に関する相談(402件)のうち、60歳以上の方が当事者の割合が68%と非常に高くなっています。複雑な仕組みの金融商品を「高額配当が受け取れる」「損はしない」などと言葉巧みに勧誘され契約したところ、利益が出るどころか殆どお金が戻らなかったなどという相談が寄せられています。過去に未公開株やファンド型投資商品で被害にあった方に、被害回復を装い新たな金融商品等の購入を勧誘(二次被害)する悪質なケースもありました。

取引内容がよくわからない、説明を受けても理解できない契約は、きっぱりと断ることが重要です。

【消費者センターによるトラブルの解決と被害の救済】

▼クーリング・オフの助言

訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引を始めとする一定期間内にクーリング・オフが可能な契約についての相談に対しては、クーリング・オフ制度の活用とその方法などを助言しています。助言した相談案件は907件ありました。

▼あっせんの実施

消費者が自主交渉を尽くしても問題解決が困難であり、事業者の販売方法等に法令違反などの問題点がある場合には、消費者と事業者の間に入ってあっせん交渉を行うことにより被害の救済を図っています。平成22度にあっせんを行った相談案件は810件あり、うち91%である737件をあっせん解決しました。

【事業者指導の実施】

大阪市消費者保護条例では、販売目的を隠した勧誘や、執拗・強引な勧誘、クーリング・オフの妨害などを「不当な取引行為」として禁止し、消費者被害を防止するため、違反した事業者に対して指導を実施しています。平成22年度は、7事業者に対して指導を行い、2事業者に対しては文書で勧告を行い、是正を求めました。

また、「特定商取引に関する法律」に基づいて行う大阪府の行政処分と連携して悪質な事業者に対する指導を強力に進めています。

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