随意随想

「人生の楽園 新しい生き方の提案」

大阪市立大学非常勤講師 竹村 安子

冒頭に「今週は何かいいことありましたか? 私、思うんですよ…人生には楽園が必要だ」という西田敏行さんのナレーションで始まる、土曜日18時からの30分番組「人生の楽園 新しい生き方の提案」(朝日放送6チャンネル)をよくみています。みることができない時は録画をして、後でみています。

ここに登場する人たちは一生懸命に働いてきて、40歳代後半から60歳代前半に、ふと立ち止まって、別の人生を歩いてみたい…、心からいいなと思える充実した時間を過ごしたい…と思い、新たな第二の人生をみつけ、夢に向かって努力し、自分の「人生の楽園」をみつけていく、そういう人たちの第二の人生が紹介されています。

人生の半ば以上を過ぎて、後の20年30年をどう生きていくのかを、考えさせてくれます…。

多くは定年退職する前後に、温めていた第二の人生に向かって、家族の説得や準備を重ね実行していく。7月6日は、50歳代のご夫婦が兵庫県淡路島の南あわじ市に三年前に移住して、夫は玉ねぎなどの野菜づくり、妻は大好きな雑貨の店を自宅の一角に開いて、それぞれ自分がやりたいことをやりながら、家族や近隣の人たちや友人・仲間との豊かなつながりを育みながら生活しているというもの。

この番組のいいところは、お金儲けや立身出世、他人を蹴落としても這い上がろうとする貪欲さが全くなく、温かく、急がず、ほっこりと、自分が楽しみ、その周りの人たちとのつながりを大事に育み、共に楽しんでいる様子が伝わってくることです。

やっていることは、農業、漁業、有機野菜のレストラン、民宿、カフェ、陶器づくり、木工や家具作りなど異なっていますが、その中で共通しているのは、そのやりたいことを通して友人作りや新しいコミュニティづくり、地域の活性化ということを、登場者が強く感じていることです。自分が住み続けていきたいという「地域」「町」を、大事にしていきたいという思い、その素晴らしさを伝えていきたいという思いが伝わってきます。

私は「地域福祉」を仕事にしてきて、「地域」は「住んでいる所」という感覚でしたが、「地域」「町」は、「住んでいる」だけでなく、自分の「人生の楽園」をそこで作りたいと思わなければ、「地域」「町」を大事にしようという気持ちにならないのではないかと思うようになりました。

「あなたは、住んでいる『地域』『町』に自分の『人生の楽園』を創ろうと思いますか?」

私は、住まいの近くの約10坪の小さな、築80年ほどたった長屋の古民家を購入し(古くて小さくて全く手を入れていなかったので安かったのです…)、改修工事をして、今年の4月4日にコミュニティサロンをオープンしました。

グループでの利用もありますが、開けているのは水・木曜日の週2日間(第2水曜日は地域の喫茶サロンがあるのでお休み)で、コーヒーや紅茶を注文するとお菓子がついて100円、注文しなくてもOK、持ち込みOK、休憩だけでもOK、トイレを借りるだけでもOKです。水曜日の開所時間は朝9時から午後4時、木曜日は朝11時から午後4時、水曜日だけ飲み物とロールパン・ゆで卵がついて150円のモーニングサービスをしています。そして、午後は映画会やヨガの会、語りなどのプログラムがあります。木曜日はおしゃべり中心のゆったりサロンです。

このように違うのは、お世話している人(以下「世話人」という)が、「これをしたい」「やってみたい」ということをやっているからです。

この世話人や企画・運営を担当する運営委員、そして、子供お話会、語り、ヨガなどをしている人たちも、すべてボランティアです。

その活動を通して、今、面白いなぁーと思っていることがあります。

私が、このコミュニティサロンをつくったのは、地域でいろいろな人が集える居場所が欲しい、ほっこりと人と人がつながる場が欲しい、いろいろな思いを持つ人たちのグループ活動の場が欲しいなどなどの思いを持っていたこともありますが、一番は自分の活動の場、自分のための「人生の楽園」を創ろうと思ったからです。

この私の「人生の楽園」が私だけでなく、世話人さんたちにとっても、「人生の楽園」になっているのではないかと、最近思うのです。世話人さん自身が活動を楽しみ、友人と集い、そこで友人をつくるという育みの場になっていると感じるのです。だから、「やりたい」ということが生まれてくるのかなぁーと思います。

まだまだ来られる方たちは少ないですが、無理をしないで、口コミで、来たいと思う人にきてもらえたらと思っています。

そして、住んでいる区内で、70歳代の女性が自宅の一部を月に3日間開く「住み開き」型のサロンを始められました。このサロンが彼女とその周りの方々にとっての「人生の楽園」になってほしいと思っています。

老人クラブが「人生の楽園」づくりを提唱して、住んでいる「地域」にたくさんつながりの場ができ、住んでいる「地域」を大事にしようという人たちが増えてくれば、私たちの「地域」は本当に住みよい、すばらしい「地域」になるなぁーと、夢見ているのですが、いかがでしょうか…。

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