随意随想

「超健康人の健康診断基準」

NPO法人JMCA理事長 羽間 鋭雄

このほど、日本人間ドック学会と健康保険組合会は、健康診断における血圧、血糖値、コレステロール値、肥満度などについて、新たな基準を策定すると発表しました。

この新たな基準の策定に当たっては、人間ドック検診施設機能評価認定を受けた200施設より、約150万人の健診受診者のデータを解析し、(1)ガンなどの重大な病気の既往歴がない、(2)高血圧や糖尿病などで薬を服用していない、(3)喫煙習慣がない、(4)飲酒は1日1合未満、などの条件を満たす約34万人の「健康人」を選び出し、このうち検査値をもとに、1万〜1万5千人の「超健康人」に絞って、「健康」と判断できる数値の範囲を決めたもので、予防医学の観点から求められた「健康な人」の検査値であることが特徴です。

新しい基準では、表で見られるように、従来の、高血圧学会や糖尿病学会などの医療専門の学会の診断基準の値と比べて、血圧、血糖値、コレステロール値、肥満度が大幅に緩められていることが分かります。

科学として発展してきた近代医学は、すべての病気の判断や判定が検査の数値によってなされています。すなわち、基準が変わるということは、それまで病気と判定されて病名がつけられていたものが病気でなくなったり、病気でなかった人が、突然病気になるということが起きるということです。

新たな基準から見れば、不必要な、別名デビルピル(悪魔の薬)と呼ばれるコレステロール降下剤や、数え切れないほどの副作用が列記された血圧降下剤を服用し続けている、数え切れないほどの犠牲者がいるのではないかと思われます。

新たな基準を発表した日本人間ドック学会では、「これまでにない大規模調査の結果で求められたこの基準を統一基準として欲しい」と訴えていますが、残念ながら、もし、新基準への移行の兆しが少しでも見えた途端、おそらく起こるであろう薬の売り上げが大きく落ちる医薬業界の大変な圧力に屈服して、厚労省が速やかに動くことは期待できそうにはありません。

医療のみならず、食も環境も「命より金」という産業優先の傾向が随所に見られる現状にあっては、自らの命を守れるものは自分しかないことをしっかり肝に銘じるべきだと思います。

世界の長寿村として有名な地域(山岳地帯の農耕民族)の共通した条件は、▽水と空気の質がよい▽気候がやや厳しい(冷暖房がない)▽労働がややきつい(運動が足りている)▽ストレスが少ない▽摂取カロリーが少ない▽蛋白質の摂取が少ない(動物性食品をあまりとらない)▽野菜の摂取が多い▽早寝早起き▽規則正しい生活▽高齢者ほど敬われる、などということです。

これと現在の私たちの日常生活を対比してみると、まるで正反対であるといわねばなりません。

大切なことは、健康診断の値に一喜一憂することではなく、日常の生活習慣を常に見直し、正すことにほかなりません。

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