随意随想
「フレイル」って何?〜いつまでも元気で暮らすために大切なこと、ご紹介します!
大阪市福祉局高齢者施策部在宅サービス事業担当課長 田中 明子
【フレイルとは?】
最近、テレビなどで「フレイル」という言葉を見聞きされたことはありませんか?実は、高齢期の方にとって関係の深い言葉です。フレイルとは、“加齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護状態の間(虚弱)の状態”を言い、放置すると健康や生活機能を損なうおそれがあります。
では、心身がどのような状態なら、フレイルなのでしょうか?フレイルチェックをしてみましょう。次の5項目のうち、いくつあてはまるでしょうか。
@6か月間で体重が2〜3kg以上減った
A筋力(握力)が低下した
Bわけもなく疲れたような感じがする
C歩く速度が遅くなった
D身体の活動量が減った
該当する項目がない方は健康、1〜2項目の方はプレフレイル(フレイルの前段階)、そして3項目以上の方はフレイルの疑いがあります。
【フレイルは改善・予防できます】
フレイルチェックで該当があった方は不安に思われるかもしれませんが、フレイルの段階ならフレイル予防を行うことで健康な状態に戻れますし、該当がなかった方もフレイル予防により健康な状態を維持することができます。
フレイル予防には「社会参加」「身体活動」「栄養」の3つの柱があると言われています。いつまでも元気に暮らすため、日常生活の中でこれらをバランスよく組み込んでいくことが大切です。
まず、「社会参加」ですが、ともかく外出することが大切です。外出により人と交流する機会が増えますし、そうなると、おのずから「人とのつながり」ができてきます。最近の研究で、人とのつながりがない方は、つながりがある方に比べて様々な身体の病気や認知症になる可能性が高く、結果として早期に亡くなる率が1・5倍高くなることが分かりました。趣味活動、ボランティア、友人との食事、買い物など何でもいいので、できれば1日に1回は外出するようにしたいですね。
次に、「身体活動」ですが、運動など動くことが大切です。何歳になっても積極的に体を動かすことで筋力を維持・向上できますが、そのためには運動器に適度な負荷を与える必要があります。ウオーキングなどの有酸素運動や足腰の筋力トレーニングが効果的です。無理をせず、ご自身のペースで運動を続けていきたいですね。
最後の「栄養」には、食生活と口腔機能の2つの面があります。これまで肥満予防のため食事量を抑えていた方が多いと思いますが、高齢期の方はむしろ低栄養による「やせ」に注意が必要です。体重が減るとフレイルになりやすくなります。高齢期には、筋肉などを作るもとになる「たんぱく質」と体を動かすもとになる「エネルギー」が大切です。たんぱく質をできるだけ毎食とり、バランスのよい食事を心がけましょう。
また、しっかり栄養をとるためには、噛む力などの口腔機能を維持することが大切です。口腔機能の低下はフレイルのきっかけとなりやすいので、口や歯にはいつも関心を持ってくださいね。毎食後の歯みがきで口の中を清潔にし、口を動かす体操で噛む力や飲み込む力を維持しましょう。
【大阪市の取組み】
次に、大阪市で行っているフレイル予防の取組みをご紹介します。大阪市では、一般介護予防事業として、高齢期の方がいつまでも元気で暮らすことができるよう様々な事業を行っていますが、中でもお薦めは「介護予防ポイント事業」と「百歳体操」です。
「介護予防ポイント事業」とは、高齢期の方が外出の機会を増やすことによりご自身の生きがいづくりや介護予防につなげることを目的としており、65歳以上の方が介護保険施設で利用者の話し相手やレクリエーションの補助などの活動を行うと、時間に応じてポイントが得られ、蓄積したポイントを換金できる事業です。昨年4月からは、保育所でも遊びの補助や登降園時の見守りなどの活動を行えるようになっています。
現在、介護保険施設と保育所を合わせて約580か所で活動でき、約2800人の方が活動登録されています。活動者アンケートでも生きがいづくりにつながっているとのお声が多く、実際に活動されるとその良さを分かっていただけると思います。先程の活動例の他にも様々な内容があり、好きなことや得意なことをご自身のペースで生かせます。興味のある方はぜひ活動登録をお願いします。
「百歳体操」はご存知の方が多いでしょうか。
国では、介護予防について、全ての高齢者を対象とし、住民自身が運営する通いの場の充実により、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを推進していくこととしています。
そこで、大阪市では、運動器の機能向上に効果がある「いきいき百歳体操」を用いて、住民主体の体操・運動等の通いの場が拡大していくよう、体操に必要な物品の貸出や効果的に体操するための助言を行うリハビリテーション専門職の派遣などを行ってきました。その結果、現在は市内約600か所で開催されています。また、昨年4月には口腔機能向上に効果がある「かみかみ百歳体操」も併せて行っていただけるよう、歯科保健専門職の派遣も開始しました。
開催場所も、地域の会館や老人憩いの家に加え、商店街の空きスペースや銭湯、診療所など様々です。全区の老人福祉センターでも開催していますので、興味のある方は一度覗いてみてください。「かみかみ百歳体操」も行っているセンターもあります。
栄養(食生活)については、各区の健康講座などで管理栄養士による話がありますので、興味のある方は区保健福祉センターへお問い合わせくださいね。
地域における健康づくりや生きがいづくりに尽力されてきた老人クラブの会員の皆様は、まさに高齢期の市民のお手本です。今後とも、フレイル予防・介護予防のリーダーとして、ますますご活躍されますことを期待しています。