随意随想

大阪市の高齢者施策について

大阪市福祉局高齢者施策部高齢福祉課長 新原 雅佳

第1 大阪市の現状

大阪市の令和元年10月の65歳以上の推計人口は70万4473人、人口割合は25・7%で、65歳〜74歳の人口が約33万人、75歳以上の人口が約37万人となり、75歳以上の人口が、65歳〜74歳の人口を上回っている状況にあります。

 国立社会保障人口問題研究所による大阪市の将来推計人口では、団塊の世代が75歳以上となる令和7年には、65歳以上人口が70万人を超え、65歳〜74歳の人口が約27万人、75歳以上の人口が約43万人になり、この75歳以上人口は今後も増加するとされ、また団塊のジュニア世代が65歳上となる令和22年には、65歳以上高齢者人口が約79万人、うち65歳〜74歳の人口が37万人、75歳以上の人口が42万人になるとされています。

 また、大阪市の65歳以上の世帯の特徴として、単身世帯の割合が高く、平成27年の国勢調査では、65歳以上を含む世帯に占める65歳以上単身世帯の割合が42・4%となっており、全国平均の27・3%よりも大幅に高く、また、政令指定都市(平均32・0%)の中で最も高い割合となっています。

第2 大阪市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画

 大阪市では、平成30年3月に「大阪市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(2018(平成30)年度〜2020(令和2)年度)」を策定し、この計画に基づいて、団塊世代が75歳以上となる令和7年の社会を見据えた医療・介護・介護予防・住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の深化・推進の取組みなどの高齢者施策を推進しています。

 その中で次の5つを重点的な項目として位置づけ、様々な取組みを推進しています。

@「高齢者の地域包括ケアの推進体制の充実」では、疾病を抱え、医療と介護の両方が必要となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしが続けられるよう、在宅医療と介護の連携推進に取り組んでいます。また、地域におけるネットワークを構築し、地域が抱える課題の解決に向けて継続的に支援する機関として、地域包括支援センターの役割が一層重要となることから、同センターの運営の充実に取り組んでいます。その他、住民が主体の身近な助け合いにより孤立化を防止する「地域における見守り施策の推進」や「複合的な課題を抱えた人への支援体制の充実」にも取り組んでいます。

A「認知症の方への支援と高齢者の権利擁護施策の推進」では、平成30年2月13日に「認知症の人やその家族の視点の重視」の取組みとして、認知症の人やその家族と市長の意見交換会を開催するとともに、市長による「認知症の人をささえるまち大阪宣言」を行いました。本計画においても、宣言にある認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる社会の実現をめざし、あらゆる世代や立場の人が協力して、認知症の人にやさしいまちづくりに取り組むこととしています。また、虐待を発生させない地域づくりをめざし、高齢者虐待防止の取組みを進めるとともに、高齢化の進展に伴い権利擁護の支援を必要とする人がますます増加すると見込まれるため、成年後見制度の利用促進及び日常生活自立支援事業の推進に取り組んでいます。

B「介護予防の充実、市民による自主的活動への支援」では、高齢期を健やかに過ごすためには、介護予防と生活習慣病対策の総合的な取組みが重要なことから、「百歳体操」等の介護予防に効果のある体操・運動等の通いの場の充実に取り組むとともに、生活習慣病の予防の取組みを関係機関と連携しながら進めています。また、地域における高齢者の生きがいづくりや社会参加は、介護予防としても重要であることから、地域活動への参加支援、自らの労働能力を活用した就労支援、「老人クラブ」の活動支援等を通じて、高齢者の生きがいと健康づくり、社会参加の促進を引き続き支援していきます。

C「地域包括ケアの推進に向けたサービスの充実」では、地域包括ケアの推進に向けて、ボランティアやNPO、民間企業等による多様なサービスの充実に努め、重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で日常生活ができるよう介護給付対象サービスの充実や介護サービスの質の向上と確保などに取り組んでいます。

D「高齢者の多様な住まい方の支援」では、高齢者ができる限り住み慣れた地域に住み続けられるよう、居住の安定に向けた支援を実施するとともに、自宅での生活が困難になった場合の施設等への住み替えなど、高齢者の状況やニーズに沿った多様な住まいを確保し、また、住み慣れた地域で安全・安心に暮らすための住環境の整備を進めています。

 大阪市では、今後も「高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、団塊の世代が75歳以上となる令和7年に向け、更にはその先の団塊のジュニア世代が65歳以上となる令和22年を見据え施策の推進に努めてまいります。

第3 最後に

 老人クラブは、「健康・友愛・奉仕」の実現をめざす、地域に根ざした活動組織であり、地域のニーズに応じた様々な活動展開を行うことにより高齢者同士の交流を通じた生きがいと健康づくりを進めておられ、老人クラブの果たす役割が今後ますます重要になってまいります。今後も地域での様々な活動を展開され、地域づくりの担い手としての一層の取組みとご活躍を期待いたします。

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